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「嘆きの壁」出現 開催喜べない国民


 【サンパウロ2日(日本時間3日)=清水優、エリーザ大塚通信員】ブラジル政府が当初予算の3倍ともいわれる250億レアル(約1兆1200万円)超をつぎ込んだサッカーW杯ブラジル大会開幕を前に、ある壁の落書きが話題を呼んでいる。サンパウロ市内の学校の門にスプレーで描かれたグラフィティ(落書き)アートで、おなかをすかせた子どもが、サッカーボールを前に涙を流す様子を描いてある。国民の不満を表現した風刺画として、インターネットを通じて世界中に拡散している。

 サンパウロ市内、SEパルメイラスの本拠地パレストラ・イタリア競技場のほど近く。幼児教育を行う学校の5メートルほどの高さの門に描かれた絵が、世界中に広がった。

 木製の門には、黒人の服を着ていないやせた子どもが描かれている。ペンキがはげ、穴の開いた家の中でテーブルにつき、ナイフとフォークを両手に握って涙を流している。テーブルの上には1枚の皿。その上には食事ではなく、サッカーボールが置いてある。左下には、「パオロ・イトウ 2014」のサインがある。

 仕事帰りに通りがかった建築家ヘナータさん(28)は、「貧しい子どもをW杯の夢でごまかそうとしているが、ボールで空腹は満たされない。行政への風刺で、私もすごく共感できます」と絵に見入った。

 サンパウロ市内では、道路や高層マンション、トンネルの壁などに多くの絵が並ぶ。この作品もその1つ。中には米ニューヨークのニューヨーク近代美術館(MoMA)に作品が収蔵されるブラジル人作家も出てきており、ただの落書きではなく、芸術の一分野として認知されている。

 ヘナータさんは「ブラジルが抱える問題の解決策はW杯ではなく、教育しかない。こういう作品が描かれるのはブラジル社会にとってもプラスになると思う」とも話した。

 近くの歩道で遊んでいた6歳の少年は「おなかが減ってとっても悲しそう。でもボールは食べられないから、かわいそう」。塗装業の父親は「W杯に何億レアルも使うなら、いい病院や学校がたくさん造れるはず。それを訴える絵だと思うし、それは現実」と共感した様子だった。近くの男性(42)は「W杯自体は悪くない。予算をかすめ取る泥棒みたいな政治家や業者がいることが、本当の問題だ」と話した。

 ◆ブラジルの貧富の格差 世界の上位10位に入るほど、貧富の格差が激しいとされる。富裕層が全体の約10~15%に対し、貧困層は約35%。全人口約2億人のうち約7000万人が貧困に苦しみ、そのうちの約2000万人が飢餓状態にあるという。年収10万ドル(約1000万円)以上の富裕層が住む高層マンションと、スラム街が隣り合っていることも多い。























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