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偏狭な時代鋭く風刺 相棒-劇場版3-巨大密室!特命係絶海の孤島へ

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映画「相棒-劇場版3- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ」の水谷豊(左)と成宮寛貴。(c)2014「相棒 -劇場版3-」パートナーズ 

 刑事ドラマ『相棒』も、映画化第3弾となるとスケールもアクションも倍増。絶海の孤島を舞台に、国家を揺るがす陰謀に立ち向かう。民兵組織の死亡事故を端緒にする物語。流行のテロリストものを予想させ期待値を急降下させるが、杉下右京の鋭い風刺が鬱屈した心情を晴らし、偏狭な世相に風穴を開ける。和泉聖治監督。

 元特命係の神戸尊(及川光博)から事故再調査の密命を受けた右京(水谷豊)と甲斐亨(成宮寛貴)のコンビは南の島へ。民兵組織のリーダー(伊原剛志)や女性隊員(釈由美子)に嫌悪される中、殺人事件の確信を得るのだが…。

 軍事力を高める中国に核実験を行う北朝鮮。緊張感が高まる極東アジア情勢を下敷きに物語はすすむ。有事を想定して、過酷な訓練を続ける民兵組織は、右傾化する人々の象徴。実業家や政治家の援助を受けたリアルな暴走は、平和な日常に危機感を与える。

 いつもの鑑識課員や捜査一課員も駆け付け証拠を得るが、右京らは自衛隊員に拉致されて東京へ連れ戻される。そこで、自衛隊が極秘に備蓄していた生物兵器が、島と関係していることを突き止める。隠滅へと動く防衛省と、捜査を進める警察庁の水面下での駆け引き。島では自衛隊と民兵組織が激しく火花を散らすなど濃密な攻防が畳みかけるように展開される。権力間抗争のはざまに陥り、身動きが取れなくなる右京。今度ばかりはお手上げかと思わせる。

 だが、コンビは捜査を続行。殺人事件として犯人を逮捕し、陰謀解決への糸口を見いだす。そして犯人が語る現代日本の「平和ボケ」や「国防意識」への不満…。犯人の深層心理をえぐる右京のセリフに、大人のあるべき見識の高さを教えられる。

 【メモ】14年日本。上映114分。GW全国ロードショー中。