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 仏週刊新聞「シャルリー・エブド」が銃撃事件後に掲載したイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を転載したことについて、東京新聞が29日付の朝刊に「イスラム教徒の方々を傷つけました」と記した「おわび」記事を掲載した。

 おわびが掲載されたのは東京新聞の「社説・発言」のページ。風刺画を転載した理由について、「『表現の自由か、宗教の冒とくか』という問題を提起するうえで読者に判断材料を提供するため」で、「イスラム教を侮辱、挑発する意図は全くありません」と記した。

 一方で「在日パキスタン人らのイスラム教徒二団体」から抗議文書を受け取り、読者から「掲載で傷つく人がいるとしたら、それが少数の人たちであっても、その気持ちを尊重したい」との声が寄せられたことを明らかにしたうえで、「読者のみなさんの声を共有しながら、伝える役割と責任をより深く考えていきます」と説明した。

 同じ風刺画は日本経済新聞、産経新聞が掲載し、共同通信も配信した。朝日新聞の取材に対して、日経新聞は「他社の編集判断や、個別の紙面対応については原則として答えていない」、産経新聞は「他社の判断なので、コメントする立場にない」、共同通信は「今後何らかの対応をとる予定はない」と答えた。

 今回の東京新聞の対応について、大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理)は「風刺画の掲載で読者に判断材料を提供するというスタンスが変わった、との説明がないのに『おわび』が掲載された。東京新聞が表現の自由をどうとらえているのかも、将来同じようなことがあった時の編集方針も分からない」と指摘する。

 映画監督で作家の森達也さんは「一度載せると決め掲載したのであれば、メディアは簡単に謝罪すべきではない。メディアは何かを伝えるうえで、人を傷つける可能性があることに常に自覚的であるべきだ。言論の萎縮、自制につながらないか心配だ」と話す。(清水大輔、小寺陽一郎)