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 仏週刊新聞「シャルリー・エブド」などに載った風刺画をまとめた本を、東京の出版社「第三書館」が10日発行した。題名は「イスラム・ヘイトか、風刺か」。その名の通り、出版への評価は分かれる。絵にはモザイクがかけられたが、イスラム教徒の反発などもあり、発売に至るまで書店や寄稿した人の対応は揺れた。

■注文販売のみの書店も

 東京都内のある書店は計8冊を仕入れ、入り口付近の新刊コーナーに並べた。

 手に取り1冊買い求めた私立大1年の女子学生(21)は「品のない絵だと思ったが、知ることを目的にまとめて出版することには意味がある」。一方、都内の金融業の男性(50)は本のことは報道で知っていたが買わなかった。海外でイスラム教徒と仕事をした経験もあるというが「『イスラム国』は日本人を標的にすると言っている。関わりたくない」と話した。

 第三書館にはこれまでに約500店から3千冊の注文が入ったという。書店側には慎重な対応が目立つ。

 出版取り次ぎ大手の日販やトーハンは、過去の取引実績から注文がなくても書店に本を届ける委託販売ではなく書店側の注文を受けて本を卸す方法をとった。値段が高い本や専門性の高い本で多く使われる手法という。取材に対しトーハンは「書店側に迷惑がかかる可能性があるので配慮した」、日販は「書店との話し合いの中で判断した」とそれぞれ答えた。

 大手書店では、三省堂(約35店舗)はイスラム教徒への配慮などから店頭には置かない。だが既に客から注文があり、今後も注文販売はするという。丸善ジュンク堂書店(約85店舗)は「選択肢を提供するのが書店の使命。販売自粛の指示はせず、各店舗の判断に任せる」。取次会社に注文するかどうか、店頭に並べるか否かなどの対応を本部では決めなかった。10日時点で注文した店舗でも本は入荷できていないという。一方、八重洲ブックセンター(13店舗)は注文販売もしないといい、「販売してお客様に何かあってはいけない」と安全面への配慮を理由に挙げた。本はネット通販「アマゾン」などでも取り扱うという。