[PR]

■南十字星の下で

 オーストラリアの政治風刺は、かなりきわどいと思う。地元紙を開けば、政治家が気の毒になるほどデフォルメされた風刺画はもちろん、CGで写真を加工しまくったパロディーが1面にでかでかと載ることもある。テレビでも、ニュースキャスターがインタビュー中に政治家をいじるのは日常茶飯事だ。

 最近では、ブランディス司法長官がセーターにジーンズ姿で歩いているのが目撃され、ソーシャルメディアで徹底的にからかわれていた。こわもてで常にスーツ姿のイメージがある司法長官が、3色のカジュアルなセーターを着たのがツボだったようだ。

 公共放送の豪ABCテレビまで、日曜の報道番組「インサイダー」内で「セーターギャグ」をとり上げた。揚げ句、同じセーターを着たコメンテーターに、司法長官の事務所へ押しかけさせた。最後には、長官本人が苦笑いしつつ、「では、次のコーナーへ」と前振りしたほどである。

 いかにもジョークが好きそうなパイン教育相に至っては、民放テレビの番組中に駐車場へ連れて行かれ、車のタイヤ交換をさせられた。昨年度予算案に盛り込まれた教育政策で数々の問題点が指摘され、そのたびに「僕が直す(I will fix it)」を連発したためだ。「大臣、そんなに修理が得意なら、パンクしたタイヤを直してくださいよ」というわけだ。

 時々、見ている方が「政治家が怒り出すのでは」「メディア側が訴えられないのだろうか」とはらはらする。だが、オージーに言わせると、「ジョークで振られたらノリよく受けないと、『あの政治家はすかしたヤツだ』と有権者に嫌われてしまう」のだそうだ。政治家も大変だ。

 先日、シドニーの知人から『The Hollowmen(空っぽの男たち)』というコメディードラマのDVDをもらった。舞台はキャンベラの首相府だという。2008年にABCが放映して人気を博した番組で、知人は「これ、絶対にあなたは好きだと思う」と自信満々だった。