スノーク初登場のエピソードはもう一つある。

先述のようにトーベは10代から旺盛に仕事をしていたが、中でも特筆すべきは1930年代から40年代にかけて政治風刺雑誌「ガルム」に連載した風刺
である。ミュンヘン会議のあった1938年には、ヒトラーを駄々をこねる子供に模して描き、フィンランドが冬戦争に突入するとスターリンを揶揄する風刺
画を描いた(検閲により当時は印刷されなかった)。本書にどちらの絵も収録されているが、トーベ・ヤンソンにはこんな一面もあったのかと、はっとさせら
れるイラストだ。

スノークが公の場に姿を見せたのが、このガルム誌だった。1943年のことである。はじめトーベのサインに小さく添えられていたスノークは、次第にトー
ベの分身のようになり、いろんな場面に登場するようになった。こちらのスノークは「いつも怒った顔をしていて、風刺画にふさわしい皮肉たっぷりの存在だ
った」。