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LNJ Logo 〔書評〕『でじゃぶーな人たち 風刺漫画2006―2013』山辺裕之 Home 検索 ________
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「図書新聞」2014年3月22日号

極端な右傾化による日本の危機を風刺画でアピール
安倍政権の暴走に歯止めを

   山辺裕之
[0323hon1]
 安倍政権の右傾化はとどまるところを知らず、「戦争ができる普通の国家」を目指して暴走し続けているが、世相風刺の漫画、イラストを描き続けている壱
花花さんが、2006年以来の政治テーマの風刺画を集大成し、フリーライターの織田忍さん、杭迫隆太さんが解説をつけたのが本書。第二次安倍政権成立後
、特定秘密保護法の強行採決など、戦後日本が堅持してきた平和主義、反国家主義の路線が、次々に反故にされていく様子が、よく分かる。




 第一次安倍政権、麻生政権、民主党政権時代も、有力政治家の反人民的な発言、排外主義、反中国、反韓国、従軍慰安婦問題や南京大虐殺などの、「日本の
戦争責任をなかったことにしよう」という発言や、これを支持すると極右勢力の動きなどを手厳しく批判する風刺画を書いてきたが、一昨年暮れの第二次安倍
政権成立後、戦前の大日本帝国時代に回帰することを目指すような、軍拡、中国・韓国批判、原発再稼働、新自由主義的経済政策による一段の貧富の差の拡大
と、若者の就職難、非正規労働の拡大に危機感を深め、「風刺画で分かり易く、現在の政治的危機を訴えよう」と、ふたりのフリーライターの支援を得て、出
版に漕ぎ着けた。

 また、これらの問題について、反動的攻勢に抗して戦っている弁護士、住民運動家らのインタビューも収録されている。

 安倍内閣の支持率は依然として高く、国民の間に、この内閣の政治路線の危険さがまだ、十分に認知されていないが、掲載されている風刺画とその解説を読
むと、日本が民主主義国家から大きく逸脱して、国家主義、全体主義、極端な民族主義に転換しつつあることがよく分かる。この国でこれから生きていく若者
たちが、この本を読んで、「こういう未来でいいのか」をよく考えるきっかけになることを祈る。


壱花花著
でじゃぶーな人たち
風刺漫画2006〜2013
本体1500円
三一書房 http://31shobo.com/