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「小山田二郎」展 社会風刺経て幻想表現

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うな生き物の形を通して表現する。その油彩画や水彩画は1950年代の美術界の前衛表現の一翼を担った。

 聖母マリアやキリストを思わせる人物をデフォルメして描いた一連の作品は、その社会風刺的な作風を象徴する代表作。「母」では深い愛で世界を包んでい
るはずのその顔はどこかうつろで、背後には髑髏(どくろ)のようなものが山と積まれている。太平洋戦争の生々しい記憶を背景に、人間の救いがたい業をあ
ぶり出す時代の表現である。食卓を前に、やせ細った人間が、なけなしの食べ物を口にする「食卓」にもシニカルな社会風刺の姿勢が色濃い。戦争や食料難な
どに翻弄される人間の姿は異様にデフォルメされ、画面にはおびただしいスクラッチ(引っかき傷)の跡が走る。