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国際・外国人問題
2015年02月22日 09時22分

「イスラム預言者の風刺画は日本のヘイト本と同じ」第三書館・北川社長に聞く(前編)

「イスラム預言者の風刺画は日本のヘイト本と同じ」第三書館・北川社長に聞く(前編) 第三書館の北川明社長

仏週刊新聞「シャルリー・エブド」襲撃事件の引き金とされるイスラム教をテーマにした「風刺画」。それらをおさめた本が、日本で出版された。タイトルは
「イスラム・ヘイトか、風刺か」。東京都新宿区の第三書館が編集し、2月10日に発行したが、その是非をめぐって「表現の自由か、宗教の尊厳か」の議論
が起きている。

本には「シャルリー・エブド」に掲載された風刺画を中心に、48点が収録されている。預言者ムハンマドを始めイスラム教を風刺した作品が多いが、ローマ
教皇やオランド仏大統領など他の風刺画も紹介されている。

それぞれの風刺画ごとに日本語のタイトルと簡単な解説がつけられ、日本人の翻訳者や研究者がシャルリー・エブドや表現の自由について書いたコラムも掲載
されている。文芸誌サイズのA5判型、全64ページで、パンフレットのような作りだ。



※「警察が24時間、ビルの前で見張っている」第三書館・北川社長に聞く(後編)

●シャルリー・エブドの風刺画は「ヘイト画」だ

――なぜ、出版を決めたのでしょうか。


(第三書館のある)大久保は、ヘイトスピーチの聖地みたいなところです。

たとえば、本にも掲載しましたが、ムハンマドの頭に導火線をつけて爆発させようとする風刺画や、裸のムハンマドが尻を突き出した作品がある。これは、誰
だって、いやがりますよね。



わけです。日本のヘイトスピーチと同じことが、パリで起こったのではないか。

フランス社会の中で差別され、抑圧されているイスラム教徒をバカにした風刺画がもとで、フランスでテロ事件が起きた。テロ事件を起こしたのが良いとか悪
いとかではなく、同じようなことが起こりかねないということを、日本は直視しなければいけない、と。それが出版を決めた最大の理由です。



そんな国で漫画の話を議論するのに、漫画を出さないのは意味がない、と考えたわけです。

――ただ、風刺画と漫画とは違いますよね?

違いますね。ただ、風刺画と漫画は違うけれども、ヘイトとなると、風刺に必要なユーモアやウィットを感じられるかどうか、ですよね。主観的な話ですが、
私が感じたのは、ユーモアやウィットとは違うということです。



――「やり方が問題」というのは?

シャルリーのやり方は、イスラムに対する「ヘイト」だと思います。そのほかのテーマでは、なかなか面白い風刺や批判があるとは思いますよ。311につい
て日本はめちゃくちゃひどく描かれているけれども、それはまた別の問題で。



では伝わりませんよ。

――シャルリー・エブドの作品は「風刺画」ではなく、ただの「ヘイト画」であるということですか。

第三書館の見方としては、イスラムに関しては「ヘイト本」である、と。それについて、イスラムは怒った。いわゆる風刺画としてユーモアやウィットがある
ものではなく、ヘイト漫画の世界だ、と。



ば、ロシアのプーチンなどにああいうことをしたら、プーチンを尊敬していないロシア人だって、怒るでしょう。

――収録した風刺画には、1点ごとにタイトルがつけられています。

もとの漫画にはタイトルがついていなかったけれども、うちはあえて、作品ごとにタイトルをつけました。タイトルのない漫画を、口で説明するのは、日本語


日本はイスラム教徒だけの国でないから、別の論理がある。いろいろな論理があるということです。

――つまり、風刺画をまとめて出版するという論理もありうる、ということですね?

このような風刺画を一切載せない、出さないという理屈は、日本ではなりたたない。日本でも、本では文字だけ載せて、肝心の風刺画はネットで見ればいいと
考える人もいる。しかし私は、それをやったら「出版の自殺行為」ではないかと思います。今回は、出版前に寄稿を断られたこともあった。文化人なども、こ
の問題については揺らいでいますね。