[PR]

 赤いTシャツに紺色のズボン。靴を履いたまま、波打ち際にうつぶせで横たわる男の子――。トルコの砂浜に漂着したシリア難民とみられる幼児の遺体の写真が、難民の流入に直面する欧州に衝撃を与えている。

 トルコのドアン通信が撮影、配信した。同国のメディアによると、エーゲ海に面するリゾート地、ボドルム近郊の海岸で2日朝、男の子を含むシリアからの難民とみられる12人の遺体が見つかった。対岸のギリシャ・コス島へ向かう途中、ボートが沈没し、おぼれたとみられる。

 男の子の写真は3日、欧州の多くの新聞で1面に掲載された。横たわる男の子の写真を載せた英インディペンデント紙は、「『進行中の移民危機』という薄っぺらい言葉では、難民が直面している絶望的状況があまりにも簡単に忘れ去られてしまう」と、サイトで掲載理由を説明した。

 収容される様子の写真を扱った英デイリー・メール紙は「人道的惨事の小さな犠牲者」と見出しをつけた。批判の矛先は、さらなる難民受け入れに難色を示すキャメロン英首相らに向いている。伊スタンパ紙は「我々が休暇で訪れた浜辺で何が起きているのかを、誰もが知らなければならない」と呼びかけた。

 AP通信などによると、男の子はシリア北部アインアルアラブ(クルド名コバニ)出身のアイラン・クルディくん(3)。母親と5歳の兄の遺体も見つかった。カナダ・バンクーバーに住むおばが保証人として一家の受け入れを申し出ていたが、カナダ政府に申請を却下されていたという。

 カナダのアレクサンダー移民担当相は「多くのカナダ人と同様に、悲しみでいっぱいだ」とコメントし、却下の理由を調査することを明らかにした。また衛星テレビ局アルジャジーラなどによると、トルコ当局は3日、男の子らの死亡に関連し、人身売買容疑などでシリア人4人を拘束した。

 ギリシャ政府は3日、今年に入ってから同国にたどり着いた難民申請希望者が23万人を超えたと発表した。昨年同時期の1万7500人を大幅に上回った。

 AP通信などが伝えた。8割が紛争地などから逃れてきた難民で、7、8月だけで15万7千人以上だという。(イスタンブール=春日芳晃、ロンドン=渡辺志帆)