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名誉会長

記念提言

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第33回「SGIの日」記念提言 「平和の天地 人間の凱歌」(下)

国連の「人権教育のための世界プログラム」を支援するため、学会青年部が制作した「21世紀 希望の人権展」。国連諸機関の後援を受け、各地を巡回し、反響を広げてきた(2005年12月、東京・渋谷区の国連大学ビルで)

 現在、10億人を超える人々が安全な水を得る権利を否定され、26億人が十分な衛生設備を利用できない状況に置かれています。その結果、毎年およそ180万人の子どもが下痢やその他の疫病で命を落とし、多くの女性や少女が毎日の水汲みを余儀なくされ、雇用や教育のジェンダー不平等(性別による格差)を拡大する状況を招いています。
 また、安全な水と衛生設備の不足により引き起こされる日常的な体調不良などが加わり、経済的な不平等が固定化され、人々を“貧困の連鎖”に閉じ込めてしまうことが懸念されています。
 国連開発計画も、「水と衛生に関する危機の克服は、21世紀前半の重要な人間開発課題の1つ」と位置付け、その対策が成功すれば、「ミレニアム開発目標(MDGs)に間違いなく弾みがつくことになろう」と強調しています。
 また、水と衛生設備に関する目標を達成するには、世界の軍事支出の約8日分にあたる100億ドルの追加資金が毎年必要となると試算し、「国家安全保障というより狭義の概念は除外して、人間の安全保障の向上という点からみると、少額であっても軍事支出を水と衛生設備への投資に回せば、大きな利益がもたらされる」と呼びかけています(以上、『人間開発報告書2006』古今書院から)。
 すでに、ミレニアム開発目標に関する資金的な枠組みが成果を収めてきた例として、2002年に設立された「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」があります。
 その最大の特徴は、地域や疾病ごとに事前に予算を割り当てず、各国のニーズに応じた計画を立て、審査を経て財政的な支援を行うという「途上国のオーナーシップ」が重視されていることです。また運営にあたる理事会には、各国の代表以外に、民間セクター、先進国と途上国のNGO、感染者団体の代表が加わり、同等の票と発言権を持つことで、より広範な人々の声を意思決定に反映するシステムがとられています。
 これらの特色を引き継ぐ同様の資金的な枠組みとして、「『命のための水』世界基金」を創設し、人間の尊厳が脅かされている多くの人々の状況を改善するための対策を集中的に進めるべきではないかと、私は考えるのです。
 私の創立した戸田記念国際平和研究所では、2年前から「人間開発、地域紛争、グローバル・ガバナンス」と題する新プロジェクトに取り組んでいます。
 この「人間開発」の概念とともに、「人間の安全保障」の概念を先駆的に提唱したことで知られるマブーブル・ハク博士は、戸田平和研究所の活動に創立時から期待を寄せてくださっていた一人でありました。かつて博士は、戸田平和研究所が主催した国際会議での基調講演(97年6月)で、「悲劇的結果がもたらされた下流で対峙するよりも、発生源の上流で人間の安全保障の新たな課題に取り組むほうが、容易であり、人間的である」と強調されたことがあります。
 また博士は、人間の安全保障を「人間の尊厳に関わる概念」と位置付け、「死亡しなかった子ども」や「蔓延しなかった病気」のように具体的な姿をもって人々の生活に反映される安全保障でなければならないと訴えていました(植村和子他訳『人間開発戦略 共生への挑戦』日本評論社)。その意味からも、ミレニアム開発目標に関する取り組みは、目標の達成はもとより、悲劇に苦しむ一人一人が笑顔を取り戻すことを最優先の課題とすることを忘れてはなりません。
 地球上から悲惨の二字をなくしたい――これは、私の師である戸田城聖第2代会長の熱願でもありました。その師の平和思想を淵源とする戸田平和研究所では今後、ミレニアム開発目標や持続可能な開発をはじめ、「人間開発」に関する取り組みを地球的規模で促進するための国際会議の開催や研究に、さらに力を入れていきたいと思います。

悲劇の流転を転換する新たな潮流

 ここで、「人間の尊厳」の輝く地球社会を築くために、特にアフリカに光を当てて提案を述べておきたい。
 21世紀に入り、アフリカの恒久的な平和と持続可能な成長を目指して、アフリカの国々による新たな挑戦が始まっております。
 その核となる存在が、AU(アフリカ連合)です。旧来のOAU(アフリカ統一機構)を改組する形で2002年7月に発足したAUは、53カ国・地域が加盟する世界最大の地域機関です。最高機関である総会(首脳会議)や各加盟国の代表からなる全アフリカ議会に加えて、平和・安全保障理事会、経済・社会・文化理事会、アフリカ人権裁判所などが、これまで相次いで設置されてきました。
 「21世紀はアフリカの世紀」との信念で、各国の首脳や識者と対話を重ね、民衆レベルでの文化交流や教育交流の拡大に取り組んできた私にとって、AUの挑戦が着実に成功し、アフリカの人々に大きな実りがもたらされることを願ってやみません。
 「アフリカの再生」こそ「世界の再生」であり、「人類の再生」につながる道であるというのが私の変わらぬ確信であります。
 事実、20世紀末から21世紀にかけ、人類の悲劇の流転史を転換する新しき潮流は、アフリカの大地から生まれてきました。南アフリカのマンデラ元大統領らによるアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃と真実和解委員会の取り組みしかり、先に触れたマータイ博士らによる環境運動と女性のエンパワーメントの活動しかりであります。これらの潮流は、今や世界各地に広がって、時代変革の波を広げているのです。
 またアフリカでは近年、多くの国々で内戦や紛争が終結し、民政移管へのプロセスが進むとともに、経済成長率が好調となっているように、明るい兆しがみられます。
 もちろん、ダルフール地域やソマリアにおける紛争をはじめ、貧困や難民の問題など、アフリカを取り巻く状況は、依然として厳しいものがあることは事実です。ミレニアム開発目標の達成度も、サハラ砂漠以南の地域の進捗状況が、最も深刻であるといわれています。
 しかし今、積年の負の遺産に屈することなく、アフリカの国々が互いの協力で持てる力を倍増させる方向を目指し、直面する課題に連帯して臨む基盤づくりが進みつつあることの意義は計り知れないといえましょう。



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