【移民危機】クロアチア、セルビア国境を開く

  • 2015年10月20日
Migrants wait to cross into Slovenia, at a border crossing with Croatia, in Sredisce ob Dravi, early Monday, 19 Oct 2015 Image copyright AP
Image caption クロアチアからスロベニアに入ろうと雨の中を待つ移民の家族。10月19日未明。

クロアチア政府は19日、セルビア国境を開いた。欧州北部への移動を目指しながら足止めされていた移民数千人にとっての大きな障害がひとつ、取り除かれたことになる。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のメリタ・スンジッチ報道官はベルカソボ村の国境で19日夜、「何の前触れもなく国境が開いた。みんな一気に押し寄せた」と話した。

クロアチア側ではバスが用意され、国境を越えてきた人たちを近くの受付センターに運んでいる。

スンジッチUNHCR報道官はこれに先立ち、現場の状況は「ひどいものだ」と指摘していた。「小さい子供がたくさんいる。障害のある人や移動中に病気になった人たちもいる。人が長時間いるべき場所じゃない。眠る場所がない。いつまでも泥の中でずっと立っているわけにはいかない」。

【移民危機】冷たい雨の中に幼児も スロベニア国境で待つ
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Image caption 国境沿いの小さいベルカソボ移民キャンプは多くの移民であふれかえった(19日)

クロアチア政府が17、18日の週末にかけて移民受け入れの人数を制限して以来、約3000人が国境のセルビア側のベルカソボ村で、寒さと雨の中で立ち往生していた。

これまで数カ月にわたりシリア、アフリカ各地、アフガニスタンなどから大勢の移民がトルコからバルカン半島経由でドイツやスウェーデンなど欧州連合(EU)各国を目指して移動を続けている。

Image caption ハンガリーが南側国境を封鎖したため、多くの移民はクロアチア経由でオーストリアやドイツを目指す

ハンガリーが南側国境を封鎖し、スロベニアも受け入れ人数の制限を発表したのを受け、クロアチアは17~18日の週末にかけて入国を制限。移民の間には、クロアチアから出られなくなるのではという懸念が広がっていた。

クロアチア政府はここ数日の間に少なくとも列車やバスで繰り返し、移民たちをスロベニア国境へと運んでいる。

これに対してスロベニア政府は、こうした移民の数は1日2500人に制限するという両政府の取り決めに違反するものだとしてクロアチアを批判し、さらに制限を強化している。

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Image caption スロベニアに入ろうと雨に濡れながら国境で待つ移民の人たち(19日)

BBCニュース、ガイ・デローニー記者(スロベニア・トルノベチ)

トルノベチの小さな国境検問所は悲惨な状態だった。骨まで凍りつくように冷たい雨の中、数百人が無人の中間地帯で行き場を失っていた。スロベニアへ渡ろうと19日の未明に訪れた人たちは、警官隊の列と障壁に行く手を阻まれてしまったのだ。

政府当局も支援団体も、まったく準備ができていなかった。テントもシェルターも何もなく、移民の中には大勢の幼児や赤ちゃんがいた。

たどりついた人たちは木々の枝を折ってたき火をおこし、ゴミ入れを横倒しにしてなんとか風雨をしのごうとした。

遅ればせながら到着した赤十字がクロアチア警察と交渉した結果、検問所の金属屋根の下で雨をよけることだけは認めてもらった。しかしスロベニアに入れる気配はもちろん、クロアチアに戻れる様子さえ覚束なくなり、「殺すのか」という合唱が響き始めた。

「こんな事態の責任者は恥を知れ」とシリア人男性がBBCに話した。若い女性は「シリアに戻れたらいいのに」と嘆いた。


スロベニア国境のトルノベチ村では18日夜に約500人が野宿した。さらに国境のクロアチア側で停車させられた列車内では1800~2000人が夜を明かした。クロアチア当局関係者らは移民たちに、クロアチアに一時的にとどまるか自力でスロベニアに渡るか選ぶよう告げたという。

ハンガリーは治安悪化の不安を理由にセルビアやクロアチアとの国境を封鎖。移民の多くは、より時間のかかるスロベニア経由の北上ルートを進もうとしている。

Image caption 10月12~18日にかけてハンガリーに入った移民の数

19日の国境通過に先立ち、UNHCRは移民1万人がセルビアで立ち往生していると発表していた。マケドニアから19日だけで6000人以上がセルビアに入ったという

セルビア政府関係者の一部は、南からの入国者の制限を検討していると話している。

一方で、シリア移民歓迎を方針として掲げるドイツ国内では、議論や対立が高まっている。国の「イスラム化反対」を主張する「ペギダ」がドレスデンで19日に開いた結成1周年の集会には数千人が参加した。

昨年を通じて欧州に到着した移民は昨年1年で20万人余だったのに対して、今年はすでに60万人を超えている。その大半がシリア人だ。ドイツは今年80万人が移民としてやってくると想定しているが、実際の数は150万人に達するのではないかとみられている。

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