国際報道2015

メニュー

[BS1]月曜〜金曜 午後10時00分〜10時50分

特集

2014年6月20日(金)

世界難民の日 “シリア難民”日本にも

6月20日は「世界難民の日」。内戦が続くシリアから国外に逃れた難民の数は270万人を超え、中には遠 く離れた日本にまで逃れてくる人たちもいる。現時点で52人が日本政府に難民認定を申請しているが、これまでに難民と認定された人はいない。ホームレス同 然の生活を送る人など、多くの人が公的な支援などを十分に受けることができず、厳しい生活を送っている。日本に逃れてきたシリアの人たちの知られざる実態 に迫り、日本は難民とどう向き合うべきか考える。
出演:石川えり(NPO難民支援協会 事務局長)

放送まるごとチェック

特集の内容をテキストと画像でチェックできます

有馬
「今日、6月20日は『世界難民の日』です。
難民の保護と援助に世界が関心をもつように国連が定めました。
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所が今日、発表した最新の報告書によりますと、世界各地で紛争や政治的な迫害などによって住んでいた場所を追われた難民や国内避難民、去年(2013年)1年間におよそ600万人増えました。
その総数は、第2次世界大戦以降初めて5,000万人を超えました。」


黒木
「UNHCRは、急増している原因はシリアの内戦だとしています。
シリアからの難民や国内避難民の総数は900万人と3倍以上に増えました。
増え続けるシリア難民、日本にまで逃れて来る人が出ています。」

“シリア難民” 日本にも

シリアから遠く離れた日本。
首都圏近郊を転々としているシリア人がいます。

30代のこの男性、1年前に日本に逃れてきました。
シリア国内に残る家族の安全を考え、顔を出さないことを条件に取材に応じました。
日本政府に保護してもらいたいと、難民申請をしています。
今のところ難民としては認められておらず、日雇いの仕事で得る月2万円ほどで暮らしています。
持ち物は着替えの詰まったバッグ1つだけです。

シリア人男性
「カバンの中にある服と、お金が1万3,000円。
これが全財産です。」

住む家はなく、知り合いの家を毎日のように転々としています。

シリア人男性
「今日、あなたのところで泊まらせてもらえますか?」

これまでビジネスで何度も訪れていた日本に行けば何とかなると思っていましたが、待っていたのは厳しい現実でした。

シリア人男性
「生活は悲惨です。
家も仕事もなく、こんなひどいことはありません。」

この男性を含め、現在日本で難民申請をしているシリア人は52人に上っています。
しかし、難民として認められた人はいません。
難民申請をしている1人、ユーセフ・ジュディさん。
2年前に逃れてきて、解体工場などで働き、生活しています。

「アサド大統領は出て行け。」

日本に来たきっかけは、故郷のシリア北東部で起きた反政府デモでした。
ジュディさんもデモに参加し、政府に追われる身になったと言います。

ユーセフ・ジュディさん
「殺されるか、家族を残してシリアを出るしかなかったのです。
それが日本にいる理由です。」





一緒にデモに参加した、いとこ2人と、ブローカーが手配した航空券で飛行機に乗り、たどり着いた先が日本でした。
今一番気がかりなのは、残してきた家族です。
ジュディさんがシリアを出たあと、故郷に戦火が広がり、妻は子ども2人を連れてイラク北部の難民キャンプに避難しました。
今月(6月)に入り、難民キャンプから80キロほどの都市モスルをイスラム過激派組織が占拠し、イラク軍との間で激しい戦闘が続いています。
1日でも早く安全な日本に家族を呼び寄せたい。
ジュディさんが難民認定されなければそれは不可能です。

ユーセフ・ジュディさん
「みんな元気か?
状況は?」


「ここの状況は良くないわ。
すごく暑くて子どもたちは疲れている。
娘は“いつパパのところに行くの?”って聞いてくるの。
私たちのこと、いつここから連れ出してくれるの?」

ユーセフ・ジュディさん
「日本は法律が厳しくて、なかなか許可が下りないんだ。」

家族が暮らしているテントは日本政府が提供したものです。
ジュディさんは日本政府には海外で難民を支援するだけでなく、国内に難民を受け入れてほしいと考えています。

ユーセフ・ジュディさん
「子どもたちのことを考えると眠れません。
子どもたちを日本に連れて来ることさえできれば、他には何も望みません。」

シリアから周辺国などに逃れた難民の数は280万人を超えました。
周辺国の受け入れ能力は限界に達しています。
UNHCRでは、来年(2015年)から再来年(2016年)にかけて、世界各国にシリア難民を10万人受け入れるよう求めています。
これまでにドイツやスウェーデンなど20か国が受け入れを決めましたが、日本政府は検討中だということです。

UNHCR マイケル・リンデンバウアー駐日代表
「日本政府の決断には複雑な過程と時間がかかると聞いています。
そのため、まだ正式な答えはもらっていません。
日本政府がシリア難民の受け入れを決断してくれることを期待しています。」


有馬
「こちら、3,260分の6。
この『3,260』というのは去年、日本政府に難民申請をした人の数なんです。
『6』というのは、難民として認定された人の数。
500分の1、ずいぶん難しい難民認定なんですが、こちらも見てください。

今度は、52分の0。
シリア人で難民申請した人の数が52人で、認められた人は0なんですね。」

黒木
「日本政府は、難民の受け入れを、『国際社会において果たすべき重要な責務』として、難民条約などにも加盟していますけれども、難民認定につきましては、『保護を必要としている避難民であっても、その原因が、例えば、戦争、天災、貧困、飢餓等にあり、それらから逃れてくる人々については、難民条約または議定書にいう難民に該当するとはいえず、難民の範ちゅうには入らないこととなる』としています。

日本政府は、UNHCRに去年、250億円の拠出金を出しています。
これはアメリカに次いで世界2位です。
一方で、国内での難民の受け入れには消極的だと、批判も受けています。」








日本での難民認定 なぜ少ない

黒木
「ここからは日本国内で難民の支援活動を続けているNPO法人『難民支援協会』の石川えり事務局長にお話を伺います。」

有馬
「日本政府、国際機関には拠出金も多く、貢献してるわけなんですが、国内の難民の受け入れとなるとこれだけハードルが高いと。
何でこんなことになっているんでしょうか?」

NPO難民支援協会 石川えり事務局長
「日本の難民審査基準は、国際的に見ても非常に厳しいというふうに言われています。
例えば、審査の過程では難民であることを証明するということが求められるんですが、その審査のハードルというのが、非常に高いというふうに言われています。
そもそも外国人を管理するという視点が強く、戦争や命の危険から逃れてきた人たちを受け入れていく、助けるという視点が弱いのではないかというような指摘もあります。」

黒木
「日本に逃れてきたシリアの方たち、難民認定されない中で、具体的にどのように暮らしていらっしゃるんですか?」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「多くの方は不安定ながらでも、日本での滞在や仕事をすることは認められています。
ただ、言葉にも非常に限界がありまして、日本語、英語を話せる方というのも非常に少なくて、私たちの支援の現場では、アラビア語の通訳の方を介しながら支援にあたっています。
そういったことからも、非常に生活困窮に陥ってしまう方々もいらっしゃいます。
また、ジュディさんのように家族が呼び寄せられないというのは、ご本人たちの大きな心の負担になっています。
このようなシリアの戦乱の状況の中で、家族をいまだ平和な日本に呼び寄せられないということは、支援をしている私たちもそばで見ていて非常に心を痛めています。」

有馬
「1つ聞いていいですか?
難民の認定までにどのぐらい時間が大体かかるものなんですか?」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「平均で3年程度というふうに言われています。」

有馬
「その間、大変ですよね。」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「そうですね。」



シリア難民 海外では

黒木
「日本以外の国、海外ではこのシリア難民に対して、どのような受け入れをしてるんでしょう?」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「アメリカ、カナダ、イギリスなどでは、シリアから逃れてきた、助けてほしいという難民を申請する方に対して、9割以上の方に難民としての認定をされています。
スウェーデンでもほぼ10割の方に永住権を出していまして、その永住権で家族を呼び寄せるということが可能になっています。
また、ドイツでも人道的な枠ということを設けまして、1万人の枠を設けてシリア難民を受け入れるという政策を今、実行しているところです。」

有馬
「やっぱりシリアというのが危機的な状況だという認識が、シリアの難民の人たちですね、危機的だという認識がヨーロッパにあるということなんですかね?」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「それは非常に強く共有されてるというふうに理解をしていて、イギリスでも特別枠を設けてシリア難民を受け入れるということが先ほど決定されたばかりです。」

有馬
「今、世界を見渡した時に、そのシリアの難民状況というのが、難民それぞれも厳しい状況ではありますけども、とりわけ緊急性があるということになるんですかね?」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「非常に緊急性が高いということで、国連でも非常に緊急の課題として取り組まれているところです。」



難民への対応 今後 日本は

有馬
「しかし、日本のハードルが高いわけなんですけれども、難民条約に日本も、もう加盟しているわけですし、国際社会の中で果たさないといけない責務なんですが、ハードルが高い中でどこから手をつけていったらいいんですかね?」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「まずは命の危険から逃れてきた人たちを助ける。
そして、迅速に手続きを行うということが、非常に重要だと思っています。
また、平均3年という待ち時間の中で、セーフティーネットすらないという方もいらっしゃいます。
私たちも支援の現場で何とか支援をつなぎとめたいと思っているんですが、残念ながらホームレスになってしまうという方も年々増えていってるような状況です。
また、ジュディさんのように平和な日本で家族と一緒に暮らしたいと思ってらっしゃる方も多くいらっしゃいますので、そういった方々が安心して日本で暮らしていけるという環境づくりを是非整備していきたいというふうに思っています。」

有馬
「是非、手を差し伸べたいですよね。」

NPO法人『難民支援協会』 石川えり事務局長
「はい。」

ページの先頭へ