#nippon.com » RSS Feed nippon.com / Japanese » フィード nippon.com / Japanese » コメントフィード nippon.com / Japanese » 日本の難民受け入れに関する誤解 のコメントのフィード 日米に橋をかける日本の新たな取り組み=「未来へのカケハシ・イニシアティブ」とは何か= 「永世中立」宣言から20年、日本との協力強化目指す—駐日トルクメニスタン大使インタビュー nippon.com ENGLISH |日本語 | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский メルマガ申し込み 公式アカウント Search this site____ search * in-depth * views * people * currents * features * images ホーム > nippon.comコラム 日本の難民受け入れに関する誤解 吹浦 忠正 【Profile】 + 社会 + 政治・外交 [2015.07.14] 他の言語で読む : 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | العربية | Русский | * * * * シンプルビュー / 印刷 日本は「難民に冷たい」か? 日本が難民の定住受け入れを決めたのは、1978年。インドシナ三国(ベトナム、ラオス、カンボジア)で相次いで成立した社会主義政権を拒否する約15 0万人(UNHCRによる)が難民化し、諸外国から受け入れを求める強い圧力を受けてのことだった。78年に3人、79年には2人だったが、その後は受 け入れ態勢が急速に整備され、これまでに家族の呼び寄せを含めて1万1319人を受け入れ、この制度は終焉した。 難民とは「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有 するために国籍国の外にいるものであって、その国籍国の保護を受けることができないかまたはそれを望まない者」(1951年難民の地位に関する条約第1 条)を指す。庇護を求められた場合は、人道的見地に立って、これを受け入れることが国際的な義務である。日本がこの条約に加盟したのは、同条約締結後3 0年を経てからであり、インドシナ3国から多数の人々が日本での定住を望む事態になってからの対応だった。 一方、中国残留孤児と呼ばれた人やその子孫、北朝鮮からの脱北者などについても特別の配慮をし、南米などの日系移民の子孫についても入国上の優遇措置を 行い、さらに未だ少数ではあるが、タイに逃れたミャンマーの少数民族についても計画的に受け入れつつある。 私は1970年に初めて南ベトナムと関わり、72年のバングラデシュ独立にまつわる第3次印パ戦争では国際赤十字の駐在代表として1000万人に及ぶ難 民・避難民の救済に従事。79年からはNGO難民を助ける会の創立に関わり、現在もその特別顧問として世界と日本の難民への対応について直接関わったり 、状況を調査したりして政策提言をしてきた。 したがって、私自身、これまでメディアなどを通じ、日本の難民受け入れについて「大きな問題がある」、「あまりにも消極的だ」と批判してきたので、なん としても受入数を増やしたいとの思いで、3年前、難民審査参与員を引き受けたのだった。しかし、そこで分かったことは、「5000人が難民申請して認定 されたのがわずか11人」という2014年度の数字だけを見て「難民に冷たい日本」、「人権を尊重しない法務省」と言うのは明らかに誤解であるというこ とだ。 異議申し立ても「難民と思えない」人ばかり 日本は2005年に難民審査参与員制度を導入した。法務省の判断に異議のある申請者には行政と直接かかわりのない参与員が審尋を行い、法務大臣はその結 論を最大限尊重する。参与員は全国で約80人。裁判官、検事、弁護士といった法曹界に関わってきた人、外交官や国会の専門調査官、学者、そして外国人支 援団体の役員などが3人1組で異議申し立て人にインタビューする。事務的な準備はすべて法務省職員が整えるが、審尋の中身には口を挟まない。 これまでの3年間、100人以上を担当したが、私の関わったケースは難民としての蓋然性が低く、1人として難民認定すべきとの意見提出には至っていない 。申請内容の不整合や書類の不備、事前の供述について本人が理解していない、明らかな出稼ぎ目的や退去強制逃れのための難民申請など、難民と思えない理 由は枚挙に暇がない。 「自分は同性愛者だ。自国は同性愛行為には死刑まで課される」と難民申請し、調べてみると日本人女性と暮らし、子どもまでいたケース。「自分は野党の地 方組織の青年部長だ。帰国すれば与党に殺される」と言いながら、「その党の党首は?」と聞いても答えられないケース。「滞日10年、入管法以外の罪は一 切犯していない、こんな私に日本から出て行けというのか」と迫る者もいる。 国ごとに申し立て理由がパターン化しているのもの特徴だ。ネパールからの申請者は「自分は政権与党の支持者だが、マオ派の党員から寄付金を払えと脅され た」、スリランカは「地方選挙で今回は負けた方を応援してしまった」と前議員の推薦状を持参、トルコからの申請者は「クルド人として進学・就職で差別を 受ける」と申し立てる例が、実に多い。しかし、これだけでは認定しがたい。 要するに、それぞれの国にブローカーがいて、渡航費用の調達、出国手続き、日本の空港での出迎え、当面の宿舎や就職の斡旋、入管での難民申請の仕方、弁 護士や支援団体からのサポートの受け方、不法滞在で捕まった場合の対応まで指南する。かなりの数の申請者がブローカーを使っているというのが実情だ。 現実見すえた難民認定実施を 昨今の地中海を渡ろうとする密航船、ミャンマーからのロヒンギャ人の漂流など、目を離せない事態を前に、日本は応分の「重荷の分担」をすべきだと私は思 う。しかし、それは難民としての蓋然性の高い人を救うべきで、「日本で働きたい人は誰でもどうぞ」という話ではない。 国連関係機関がむやみに難民認定のハードルを低くし、それを国際基準だと一律に強いるのは間違いだ。わが国が人道的見地に立ちつつも、現実を見据え、国 家としての矜持を保ちながら、主権行為である難民認定をきちんと実施すべきは当然だ。 途上国支援拡充が「正攻法」 日本の経済活動を維持していこうとする中で、少子化による急速な人口減少に対応する外国人労働者受け入れの準備が必要であるという主張には同感できる。 一部の国会議員や経済団体からは、1000万人規模の移民受け入れが提唱されている。 しかし、一定期間日本で働き技術や言葉を覚えると、滞在期限が切れて帰国を余儀なくされた場合でも、このまま日本で働きたいので難民認定をという人が続 出するに違いない。外国人労働者の安易な受け入れは日本の入管制度を根本的に崩壊させかねないばかりか、日本社会が無秩序のまま大きな変容を迎えること を覚悟する必要がある。 「難民」という言葉が日本語の辞書に載ったのは1943年が最初である。そのくらい「島国日本」では政府も国民も、この事象に対する歴史的経験は少ない 。しかし、わが国は今後、難民の受け入れや外国人との秩序ある共生社会の実現を図るべきであると私は考える。 数多い難民申請者の中から、日本政府は真の難民をより早く見つけ出して受け入れ、支援をしなくてはならない。それに加えて、開発途上国の人々が自国にと どまって生活できるよう、国づくりの支援を拡充していくという正攻法で行くほかあるまい。 カバー写真=バンコク空港から日本に向かうミャンマー難民(提供・時事) 関連記事 + 「難民映画祭」・日本で10回目の開催 + 日本の難民政策:受け入れは「狭き門」 + 最高裁初 親子2代で長官に + 高い評価を受けた安倍首相中東歴訪、「中庸」をアピール + 第一次世界大戦と今も続く「戦争責任」論争 + 匿名でネットを利用できる「Tor」の有効性が論争に + 1964 TOKYOから50年、あのときとこれから + なぜ野田首相は解散に踏み切ったのか + AKB48、ももクロ、橋本環奈―ライブアイドル・ブームが映し出す消費の「世代格差」 + 東京国際映画祭で見えた日本映画“成功の公式” その他のコラム + 日韓慰安婦合意・歳暮のサプライズと「後暴風」 + 日米豪印連携—-肉付けされる「ダイヤモンド安保戦略」 + TPP合意が、日本、そしてアジア・太平洋地域にもたらす地政学的な将来 + 2015年チャイナショックを振り返る + 2015年—忘れ去られた日露間の歴史的節目 + 羽生結弦、世界歴代最高得点を連発 + 日本人漫画家とガウディ + “生命の記念碑”としての広島 + 「文化の安全保障」の時代 + 「歴史」対立の中の「共存」——内政が主導する季節に入った韓国と日本 * [2015.07.14] * * * * 吹浦 忠正  FUKIURA Tadamasa * [ 署名記事数: 2 最終更新日: 2015.07.14 ] ユーラシア21研究所理事長。1941年秋田市生まれ。早大大学院政治学研究科修了。オリンピック東京大会組織委員会専門職員、埼玉県立大教授、国際赤 十字バングラデシュおよびインドシナ各駐在代表、難民を助ける会・副会長などを経てユーラシア21研究所理事長。北方領土返還運動に長年取り組み、北方 四島交流推進全国会議・副会長を務める。著書に『国旗で読む世界地図』(光文社新書)、『赤十字とアンリ・デュナン』(中公新書)、『NGO海外ボラン ティア入門』(自由国民社)など。 page top その他のコラム * 日韓慰安婦合意・歳暮のサプライズと「後暴風」 * 日米豪印連携—-肉付けされる「ダイヤモンド安保戦略」 * TPP合意が、日本、そしてアジア・太平洋地域にもたらす地政学的な将来 * 2015年チャイナショックを振り返る * 2015年—忘れ去られた日露間の歴史的節目 * 羽生結弦、世界歴代最高得点を連発 * 日本人漫画家とガウディ * “生命の記念碑”としての広島 * 「文化の安全保障」の時代 * 「歴史」対立の中の「共存」——内政が主導する季節に入った韓国と日本 関連記事 * 「難民映画祭」・日本で10回目の開催 * 日本の難民政策:受け入れは「狭き門」 * 最高裁初 親子2代で長官に * 高い評価を受けた安倍首相中東歴訪、「中庸」をアピール * 第一次世界大戦と今も続く「戦争責任」論争 * 匿名でネットを利用できる「Tor」の有効性が論争に * 1964 TOKYOから50年、あのときとこれから * なぜ野田首相は解散に踏み切ったのか * AKB48、ももクロ、橋本環奈―ライブアイドル・ブームが映し出す消費の「世代格差」 * 東京国際映画祭で見えた日本映画“成功の公式” 注目コンテンツ [l00131_main1.jpg] 男女格差:いびつな国ニッポン [d00210_main.jpg] 金星探査機「あかつき」軌道投入成功と宇宙開発へのまなざしの変化 [g00338_main.jpg] TPP合意が、日本、そしてアジア・太平洋地域にもたらす地政学的な将来 [e00092_main.jpg] ロシア文学と共に30年—群像社 島田進矢氏に聞く [l00142_main.jpg] ニュースで振り返る2015年の日本 [d00211_main1.jpg] 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