Yahoo!百科事典トップ > 言語・民族 > 日本語 > 文字 文字(もじ) [ 執筆者:日下部文夫 ] 文字 ことばを書きとどめ、それを読み取るには、文字writingがなければならない。文字は、図形記号の一そろいで、読み書きliteracyの基準をつ くる表記notationを築く成分である。字characterは、その構成単位。言語は、元来音声記号の時間的配列だが、それを文字で図形記号の空 。そのたびに選び取られた記号が前後に連なる音列として現れる。二次元面に線なりの音列そのままに言語を写し出す文字列が表記をつくる。絵が物語を映し ても、それは表記ではない。音声言語に対応する文字列が表記である。たとえば、漢数字は、「三万五千八百六十四」のように、個々の言語記号に忠実に向か い合い、音列に沿う文字列を展開する。しかし、アラビア(算用)数字は、音形に向かい合うとも、音列に沿うとも定まらず、したがって文字とはいえない。 読み書きは言語活動であり、表記には言語、文字には音韻、文字列には音列が対応する。アラビア数字は、もっぱら数という意味内容を示し、かならずしも音 音節であれ、音素であれ、音列の構成単位が文字にあてられる。文字は、構文上か形態上か語彙(ごい)上か、いずれかの別こそあれ、言語としての有意の異 ][N]などと異なろうとも、文字では「ン」または‘n’としか書かない。その一方で、同音の[j [00409.gif] ’で「(1日の)夕」とそれぞれ異なる語として書き分けられる。なお、句読(くとう)点は、文字を補って、現代の表記をまとめるたいせつな要素である。 数字や音声記号とは異なり、言語の単位とその配列に忠実に従っている。文字の単位は字であるが、表記の単位は語から文、さらに句読点を加えて文章に及ぶ 文字表記には、その目的によって幾通りかがある。 (1)正書法orthographyは、日常、公私の記述に用いられる制式である。現代日本語の場合は、これに、漢字仮名交じり、仮名専用、ローマ字書 きの3種類があるが、漢字の字種と用法には揺れがある。 文字)などは、これに近い。 (3)転写transcriptionは、外来語音を母語の表記法になじむように表記する方式で、本来便宜的処置である。明治初期「ローマ字会」が子音 Hepburn編著の「和英語林集成」の改訂版に採用された。いわゆるヘボン式ローマ字として普及したが、これは、英文むきの転写法にあたる。漢字音に (4)翻字transliterationは、原典の表記文字を別種の文字に置き換え相互交換を可能にする。1989年に国際標準化機構(ISO)が日 本語の翻字法として定め、それに先だつ再度の内閣訓令もあり、音韻論的基礎も確かな、いわゆる訓令式ローマ字は、仮名書きからの翻字法である。この普及 徹底がおぼつかない現状は、国際情勢および行政上の機構運用にかかわる課題である。なお、点字などもこれに類する。 notationには中国の'pinyin'または「注音字母」があって、もっぱら語音の標準的発音を示す。国家、国民をまとめる民族語の基盤を整える signsは、まったく言語音声の記述研究のために用い、辞書では語音の注記などにも流用されるが、公共一般の言語表記には、かかわらない。文字は暦や [ 執筆者:日下部文夫 ] 文字 * 言語・民族 > 日本語 > 文字 * 言語・民族 > 言語学 > 文字 1. 「文字論」(『河野六郎著作集3』所収・1980・平凡社) 2. 山田俊雄・柴田武・樺島忠夫・野村雅昭著『シンポジウム日本語4 日本語の文字』(1975・学生社) 3. 西田龍雄編『講座言語5 世界の文字』(1981・大修館書店) 「文字」の関連項目 1. アラビア文字 2. ギリシア文字 3. キリル文字 4. 楔形文字(くさびがたもじ) 5. 象形文字 6. 甲骨文字 7. 古代ペルシア文字 * 「文字」をもっと調べる ウェブで「文字」を検索 辞書で「文字」を検索 みんなの知識から「文字」を検索