社会開発       世界社会開発サミットの成果実施と 一層のイニシアチブに関する国際連合特別総会       ジュネーブ、スイス 2000 年6月26_30日   国際連合 「開発に対する権利は、その他あらゆる人権尊重の尺度である。このこと、すなわち、すべての個人がその潜在的能力をいかんなく発揮し、社会全体の発展に 貢献できる状況こそを、我々の目的とすべきなのである。」 コフィー・アナン 国連事務総長 1995 年のコペンハーゲン社会サミットでは、117¶国の首脳が、貧困を軽減し、雇用を促進し、社会的統合を図るために、10の公約の実施を誓約した。しかし 、コペンハーゲンで設定された目標達成に向けた進歩は一様でない。いくつかの分野で進展が見られる一方で、後退や悪化が見られる分野もある。国によって は、資金の制約、あるいは、プラスの変革を遂行する能力の不足により、社会状況の改善が遅れている。また、自然災害や他の予知できない災禍による悪影響 を受けた国もある。世界的な金融危機は、多くの国で見られた社会の進歩を逆転させ、人間の惨禍と窮乏を悪化させた。世界の多くの場所では、経済的困難の 増大により、コペンハーゲンでの公約の履行ができなくなっている。 コペンハーゲンから 5年 2000 年6月26日から30日までスイスのジュネーブで開催される特別総会では、「コペンハーゲン宣言および行動計画」、その公約、ならびに、関連する政策措 置の実施状況が評価される。特別総会はまた、新千年紀に向けた一層の革新的で具体的な提案も行うことになっている。 準備 国連社会開発委員会は、世界社会開発サミットの成果実施の監視を委任された。同委員会は、サミットで検討された中心的な問題をその優先的テーマとしてい る。1996年の会期では「貧困解消のための戦略と行動」というテーマが、1997年には「生産的雇用と持続可能な生活」が、そして1998年には「社 会的に恵まれない弱者の集団および人々を含むあらゆる人々の社会統合と参加の促進」が検討された。1999年、委員会は「万人のための社会サービス」お よび「サミット成果実施の全体的な再検討の開始」という2つのテーマを検討した。委員会は2000年2月、その活動を「サミット成果実施の全体的な再検 討に対する委員会の貢献」に当てる予定である。 1997 年に総会が設置した「特別総会準備委員会」は1998年5月、その発足会合を開催した。1999年5月17_28日と2000年4月3_14日に予定さ れている2回の実質会合では、特別総会の検討事項、非政府組織の参加およびその他の組織的事項に関する決定が行われることになっている。 コペンハーゲン社会サミットの 10の公約 * 人々に社会開発の達成を可能にする経済的、政治的、社会的、文化的および法的環境を整備する。 * 各国が設定する目標期日までに絶対的貧困を解消する。 * 基本的政策目標として完全雇用を支援する。 * あらゆる人権の強化と保護に基づき、社会統合を促進する。 * 男女の平等と公平を達成する。 * 教育とプライマリー・ヘルスケアに対する普遍的で公平なアクセスを達成する。 * アフリカと後発開発途上国の発展を加速する。 * 構造調整計画に社会開発の目標を含めるようにする。 * 社会開発に配分する資金を増大させる。 * 国連を通じ、社会開発のための協力を強化する。 環境の整備 全世界で、民主的に選ばれた政府の数は増大し続けている。しかし、民主化を成功させるためには、国民の十分な教育、知識、科学技術および情報に対するア クセスの拡充、利用可能な医療制度、ならびに、持続可能な経済発展と社会開発が必要である。国連に提出された各国の進捗状況報告は、これらのニーズ充足 のために政府と市民社会の組織が実施した無数の活動を反映している。 環境の整備は、開発に対する権利を含め、あらゆる人権と基本的自由の尊重を必要とするが、一部の国では、経済不安あるいは政治不安により、これが損われ ている。最近のアジア金融危機の社会的影響は、世界中の多くの国に及んでいる。 貧困の解消 国連開発計画(UNDP)の調査対象となった130¶国のうち、貧困削減に関する目標を設けているのは38¶国にすぎない。さらに40¶国は、かかる計 画や戦略を策定中である。UNDPが刊行する『人類の貧困の克服』によれば、女性をはじめとする貧困層の経済的エンパワーメントを達成する上で、少額融 資は広く用いられている戦略の一つとなっている。 完全雇用の促進 社会サミットで設定された雇用目標に対するコミットメントに関しては、心強い指標がいくつか現れている。例えば、先進7¶国(G7)経済会議には、金融 あるいは経済問題担当大臣に加えて、雇用と労働政策を担当する閣僚も参加している。加えて、数¶国は「雇用サミット」、すなわち、雇用問題と雇用状況改 善の方策に関する国内のハイレベル会合を開催している。 社会統合の促進 1998 年1月現在、社会統合に関連する重要な国際人権条約の批准および加入数は総計で1,016件に及んでいる。一部の国々は、人権を正規の教育およびコミュ ニティー訓練プログラムの構成要素として組み込んでいる。また、移住者および移住労働者の文化的統合を促進する措置を講じた国もある。家族の価値の重要 性を唱道することは、子どもの適切な社会的適応を図る方法の一つとして認識されている。 男女の平等と公平の達成 女性が直面する問題に対する認識は一般的に高まっており、地方および全国レベルで矯正措置を講じている国も多くなっている。多くの国々は政府部内に「ジ ェンダーのメインストリーミング」を担当するユニットを設置しているものの、具体的な進展は鈍く、不安定なものとなっている。しかも、貧困軽減という重 要な分野では、世界的な財政危機と不況を受けて、女性の問題が深刻化している。 保健・教育サービスに対するアクセス 2015 年までに、万人のための教育を達成するため、具体的な目標と計画を定めている国は100¶国を超えている。一部の国々は、貧しい人々への奨学金支給など 、金銭的インセンティブの提供を通じ、教育における公平性の推進を強調している。しかし、成人の非識字人口は9億人近くに上っており、しかもその3分の 2が女性である。 保健の分野では、1978年の「プライマリー・ヘルスケアに関するアルマアタ宣言」によって提言されたとおり、プライマリー・ヘルスケアの重視が、国内 および国際レベルでの保健政策策定の基本となっている。開発途上国と先進国の双方で、HIV/エイズの蔓延はさまざまな由々しき長期的社会影響を及ぼし ており、家族と子どもが打撃を被っている。 アフリカと後発開発途上国における発展の加速 コペンハーゲンに集まった世界の指導者たちは、アフリカと後発開発途上国の経済、社会および人的資源の発展を加速することを公約した。国連機関と国際社 会の援助を受け、これらの国々の多くは、アフリカに関するサミットの公約を支援するため、さまざまな行動を取っている。具体的には、「国連1990年代 におけるアフリカ開発のための新課題(UN_NADAF)」や「1990年代における後発開発途上国のための行動計画」を通じたイニシアチブ、および、 HIV/エイズをはじめとする感染症が、経済・社会開発の分野でアフリカ諸国が達成した進歩を鈍化あるいは後退させないようにするための特別措置があげ られる。全体的には、国際通貨基金(IMF)拡大構造調整ファシリティー(ESAF)との協定を結んだ22¶国を含め、多くのアフリカ諸国が経済改革の 実施を試みている。 構造調整計画に社会開発目標を含めること 国際金融機関が後援する構造調整計画が社会に及ぼす悪影響に対する政府の懸念から、各国は自らの構造調整計画に、貧困の解消、完全雇用の促進および社会 統合の強化を含む社会開発目標を組み入れることを公約した。 世界銀行はそれ以来、その構造調整計画の社会的悪影響に対処する一層の措置を講じている。貧困の解消を一大目標に据えた世銀は、教育や保健など、優先的 部門に対する公的支出の再配分を支持するようになっている。国際通貨基金(IMF)もまた、民主化の進展と市民社会の参加に伴い、調整計画に対する世論 の支援がその成功の前提条件であることを認識している。経済改革プログラムに関する現地主導のオーナーシップと、交渉における一層の柔軟性の必要性もま た、IMFにとって重要となっている。 社会開発への資源配分 いくつかの国々は、社会プログラム向けの資金をつくる上で、革新的な方法を見出している。例えば、一部の国々は、総家計貯蓄の国内総生産(GDP)比を 上昇させ、その課税基盤を拡張・合理化する措置を講じている。しかし、社会開発への資金配分は依然として、マクロ経済の変動による影響に非常に敏感であ り、経済が不安定なときには削減される運命にある。 調整計画の文脈において、いくつかの国々は、社会的弱者に対する調整措置の悪影響を軽減するため、社会緊急基金を設置している。開発途上国、特に低所得 国の対外債務負担は、その成長の可能性を制約するため、懸念の種となっている。 20 /20イニシアチブは、各国政府および援助機関に対し、基礎的サービスの提供に資金を配分するとともに、かかる資金をより効果的かつ公平に利用するよう 奨励するものであるが、これは社会開発向け資金を入手できるようにすることの重要性に裏打ちされている。このイニシアチブは平均で、開発途上国の公的予 算の20%、および、公的開発援助(ODA)の20%を基礎的社会サービスに割り当てるよう求めている。この点から、ODA供与額の低落傾向が続いてい ることは由々しき懸念の種といえる。 社会開発のための協力 各国の金融危機への対処を助ける上で、国際協力は極めて重要な役割を果たしている。しかし、今回の危機では、危機に見舞われた国々に対する国際通貨基金 の資金提供能力には限りがあることが明らかになった。また、先進国、途上国双方において、既存の規制・監視機構に欠陥があることも明るみに出た。IMF はこれを受け、「緊急融資メカニズム」や「追加準備ファシリティー」など、危機に見舞われた国を援助する金融メカニズムを設立した。また、国際社会は経 済体制移行国に対しても、その経済を転換し、グローバル・システムに統合するための支援を提供している。この問題に関する国連とブレトンウッズ機関の実 質的な対話の結果、1998年4月と1999年4月には、経済社会理事会ハイレベル会合が開かれ、それぞれ地球的な金融統合の影響、および、国際金融市 場と開発金融が中心に話し合われた。 検討すべき一層のイニシアチブ 2000 年6月の国連特別総会では、社会サミットの成果実施に関する全般的な再検討と評価が行われる。検討すべき一層の行動とイニシアチブとしては、以下のよう なものがあげられる。 * 金融危機に対応するための社会経済政策の原則策定 * 企業の社会的責任に関する指針の策定 * 2015年までに絶対的貧困の中で暮らす人々を半減させるという、貧困解消に関する地球的目標の採択 * 国内社会保障制度の確立、強化および運営改善 * 統合を強める世界において完全雇用を図るための地球的行動計画策定の義務づけ * 社会的目標と優先課題を中心に据え、経済的優先課題と同時に、それらの追求を図れるようにするため、マクロ経済政策の視点を転換すること * 市民社会組織の成長促進や結社の自由の保障などによる、社会的対話のための手続と制度の強化 * 国内的・国際的なジェンダーのメインストリーミング強化と男女平等の促進 * 2015年までに教育の普及を図る新たな地球的行動計画策定の義務づけ * 2015年までに基礎的保健サービスの普及を図る地球的行動計画策定の義務づけ * HIV/エイズ蔓延対策活動への支援強化 * グローバル化の文脈の中で、国内の社会サービス、社会保障およびその他社会政策の費用負担に十分な歳入を確保するための政策指針の策定 * 課税面での競争の抑制を図ることを可能とするための、国際協力および国家間の租税政策調整に関する効果的形態の判別 * 重債務低所得国の債務の大幅削減を図る一層のイニシアチブ * 現在のODA減少傾向の逆転と、かかる援助に関し合意された国際的目標を達成するための努力 * 開発指標の標準化 詳しくは以下にお問い合わせください。 Division for Social Policy and Development UN Department of Economic and Social Affairs Room DC2-1370 United Nations New York, NY 10017 電話: (212) 963-2080 ファックス: (212) 963-3062 電子メール: desktop@un.org あるいは Development and Human Rights Section UN Department of Public Information Room S-1040 United Nations New York, NY 10017 電話: (212) 963-3771 ファックス: (212) 963-1186 電子メール: vasic@un.org Published by the United Nations Department of Public Information DPI/2037 ― 99-13672 ― May 1999 ― 20M