天然ガス
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天然ガス(てんねんガス、natural gas)とは、天然に産する有機ガスで化石燃料のひとつ。
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[編集] 概要
主成分はメタンで、他にエタン、プロパン、ブタンなどを含む。産地によって異なるが水分、二酸化炭素、硫化水素などの不純物を含む。自動車、火力発電所などの燃料や工業製品の原料に利用され、燃焼したときの二酸化炭素排出量は石油より少ない。10~15m³のガスから1L程度のガソリンが採取できるものを湿性ガス(wet gas)、そうでないものを乾性ガス(dry gas)と呼び区別する。 身近なものでは、都市ガス12A・13Aである。
2002年末現在、世界の天然ガスの確認可採埋蔵量は約155.8兆立方メートル(5501兆立方フィート)といわれており、国別には旧ソ連が一番多く、イラン、カタールなどがそれに続く。 今後採鉱が盛んになることで、確認可採埋蔵量の増加が期待されている。BP統計2005年版では確認可採埋蔵量は約180兆立方メートルという報告がなされた(可採年数は66.7年)。
日本では関東地方だけでも埋蔵量は4千億立方メートル以上あると推定され、南関東ガス田を形成している。
天然ガスはガス田で生産されるか、油田において石油随伴ガスとして副産される。深海底に存在するメタンハイドレートは、採掘技術が確立されていないため現時点では未利用資源に留まる。
輸送方法には大別して2つある。1つがパイプラインによる気体での輸送で、1930年代頃からアメリカで行われており、現在ではロシアから東欧へ、北アフリカから南欧への天然ガス輸送に使用されている。そしてもう一つがLNGタンカーによる液化天然ガスの輸送で中東や東南アジアから日本への輸送に多用されている。
なお、LNG船の海難事故は極めて少なく、大規模なガス爆発やガス漏洩を含む環境破壊事故は一度も発生していない。
[編集] 液化天然ガス (LNG)
液化天然ガス(LNG, Liquefied Natural Gas)とは、天然ガスを-162℃に冷却し液体にしたもの。LPGと異なり常圧で液体である。体積は気体の1/600しかない。輸送・貯蔵を目的として液化される。
LNGを利用するためには、ガス井、パイプライン、液化プラント、LNGタンカー、受け入れ設備、気化設備などLNGチェーンと総称される一連の設備が必要である。
産地により、成分は異なるが、主成分はメタンである。
用途としては都市ガスや化学工業の原料、火力発電所の燃料などに利用される。
都市ガス利用では、関東より関西が先行、大阪ガスは昭和44年に天然ガス導入を決定1975年(昭和50年)から1990年(平成2年)までの16年間で石炭改質系からの転換を完了した。あわせて阪神港に天然ガスコンビナートを形成した。
LNGによるガス焚きの火力発電は関西電力姫路発電所を皮切りに各電力会社の主力となりつつあり、東京電力は東事業所の中核発電所である袖ケ浦火力発電所に東京ガスと共同で大型のLNG受け入れ施設を建設した。その主要な設備は三菱重工が建設した巨大な地下式断熱LNGタンクである。
LNG受入れ基地の近辺には気体に戻す際の気化熱を冷熱源とする施設を設置し、エネルギーの利用効率を高めている。前述の阪神港泉北コンビナートでは、キンレイの冷凍うどん製造工場や業務用冷凍庫などの他に大阪府立臨海スポーツセンターのスケートリンクなどが存在する。
天然ガスを液化する際には前段として脱硫・脱水等をおこなうため、LNGを燃料として燃焼させた時には硫黄酸化物の排出がまったくないという点は特長といえる。
またその他の特徴として、揮発性が高く常温では急速に蒸発し、常温では空気よりも軽いので大気中に拡散することが挙げられる。この点では、常温では空気より重く低い場所に滞留しやすいプロパンやブタンガスに比べて安全性が高いが、主成分であるメタンの地球温暖化係数は、「21」と大きいため、大気放出は避ける必要がある。
[編集] LNG受け入れ基地
- 東新潟基地(東北電力)
- 港基地(仙台市ガス局)
- 根岸基地(東京ガス・東京電力)
- 扇島基地(東京ガス)
- 東扇島基地(東京電力)
- 袖ケ浦基地(東京ガス・東京電力)
- 富津基地(東京電力)
- 袖師基地(静岡ガス)
- 知多LNG共同基地(東邦ガス・中部電力)
- 知多基地(中部電力)
- 知多緑浜基地(東邦ガス)
- 四日市基地(東邦ガス・中部電力)
- 川越基地(中部電力)
- 泉北I基地(大阪ガス)
- 泉北II基地(大阪ガス)
- 姫路製造所(大阪ガス)
- 姫路LNG(関西電力)
- 水島基地
- 廿日市基地(広島ガス)
- 柳井基地(中国電力)
- 戸畑基地(九州電力・新日本製鐵)
- 福岡基地(西部ガス)
- 長崎基地(西部ガス)
- 新大分基地(九州電力)
- 鹿児島基地(日本ガス)
[編集] 圧縮天然ガス(CNG)
圧縮天然ガス(CNG, Compressed Natural Gas)とは、高い圧力で圧縮された天然ガスのこと。環境に優しい自動車の燃料として注目を浴びるようになった(詳細はCNG自動車の項を参照)。
[編集] 天然ガスをめぐる紛争
- インドネシア: アチェ(アチェ独立運動)
- イエメン、エリトリア: ハニーシュ群島紛争
- ボリビア国内: ボリビアガス紛争
- 日本、中華人民共和国: 東シナ海ガス田問題
- ロシア、ウクライナ: ロシア・ウクライナガス紛争
[編集] 関連項目
- 液化石油ガス(LPガス)
- GTL燃料
- 国鉄キハ07形気動車(一部が天然ガス仕様に改造されて使用された)
- 勇払ガス田
- 片貝ガス田
[編集] 外部リンク
- 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (探鉱、備蓄)
- 石油資源開発株式会社 (探鉱、生産、パイプライン)