#next wezzy|ウェジー RSS Feed wezzy 現代を思案する正解のないWEBマガジン ____________________ [button_search.png]-Submit * facebook * twitter * wezzy › * 連載 › * トランスジェンダーとともに › * トランスジェンダーが出会う「社会的な死」 連載 2019.07.30 06:35 トランスジェンダーが出会う「社会的な死」 【この記事のキーワード】 * LGBT * フェミニズム * ジェンダー * トランスジェンダー * Twitterでツイート * Facebookでシェア * はてなブックマーク トランスジェンダーが出会う「社会的な死」の画像1 「Getty Images」より  昨年七月にお茶の水女子大学が、トランス女性の受験を受け入れると発表した。それ以来、ネット空間を中心として、トランス女性への差別が生じた。その 主な主張は、トランス女性と性犯罪目的で異性装をする男性との見分けがつかないためトランス女性は危険な存在である、というものだ。つまり、トランス女 性は「犯罪者予備軍」のようにみなされ、排斥されているのだ。その差別の勢いは留まるどころか、強さを増している。  このような差別的発言に対して、当事者や多くの支援者たちが反論を試みている。そして、なかには海外で頻発しているトランスジェンダーへの差別、暴力 を紹介することを通して反論を試みている者もいる。  私のTwitterのタイムライン上には「トランスジェンダーが殺されてるって言ってるけど、日本のトランスジェンダー死んでねぇじゃん」というツイ ートが流れてきた(アカウントは既にないし、あまりにもショッキングだったので正確な文言ではないかもしれないが)。私は、怒りや悲しみを通り越して、 言葉を失ってしまった。差別に基づいた不条理な死が起こらない限り、トランスジェンダーの尊厳は認められないのだろうか。死とトランスジェンダーの現存 を切り離すことはできないのだろうか。そして、このようなTwitter上でのトランスジェンダー差別に傷ついたある当事者が自ら命を絶ったと耳にした [i]。社会からの承認の否定によっても「死」は生じるのだ。  たしかに、他者によって直接殺害される事件はほとんど日本では見受けられない。しかし、「死」は、先のTwitter上でのトランスジェンダー差別か ら命を絶った当事者のように、何も直接的に他者などから生命を失うことに限られたことではない。 社会的な死  「社会的な死」とは、主に社会学で使われる概念で「人々が社会全体によって十分に人間として受け入れられていない状況」を意味する[ii]。しばしば 言及される歴史的事例としては、第二次世界大戦にナチスドイツが行ったユダヤ人虐殺、ショアー(ホロコースト)である。ユダヤ人はドイツ社会において「 人間」として受け入れられずに虐殺されたのだ。ショアーを生き残ったプリーモ・レ―ヴィは、「社会的な死」において個人から人間性がはく奪された自らの 状況を、犬に例えている[iii]。  このような「社会的な死」のトランス女性における代表的な事例としては、タイラ・ハンター事件を挙げることができる。ハンターは有色人種のトランス女 性としてアメリカで生活をしていた。1995年、彼女は交通事故にあう。そして、即座に駆け付けた救急隊員が救命処置を施すために彼女の衣服を脱がせた ところ、彼女にペニスがあることを発見した。その瞬間から救急隊員は救命措置を止め、ハンターを見殺しにした。ハンターは「トランス女性」であるがため に、負傷した人間に対して当然行われるべき医療行為がなされなかったのだ。  思い起こせば、私は、セクシュアルマイノリティとして生きながら、沢山のトランスジェンダーの「社会的な死」を見聞きしてきた。以下では、その死を語 り起こすことで、トランスジェンダーの「社会的な死」の認知と再発防止を願いたい。 トランス女性との出会いとその現実  私が女装を始めた2014年、女装イベントはガラパゴス化し始めていた。国内最大級の女装イベント「プロパガンダ」[iv]が終息を迎えていたため、 トランスジェンダーや女装が集う場所やイベントは点々としているのが当時の光景だった。  今でも思い出す、私の初めての新宿歌舞伎町での女装イベント参加。その頃、何も知らなかった私はメディアが取り上げるような煌びやかなトランスジェン ダーの人たちが集うイベントを夢想していた。  けれども、現実は異なっていた。その日はハロウィンだというのに、人々はまばらで、相互に交流をする意思もほとんど見受けられなかった。私は途方に暮 れていたのだが、やはり同じように所在無く立っていた「女性」を見つけた。  彼女に声をかけて、あまり人が騒いでいないところでたわいもない話をした。そして、話しているうちに彼女がトランス女性であることを伝えられた。同時 に、ホルモン投与や睾丸切除により精神状態が安定せず、そのため定職につけないまま、非正規雇用労働を転々としながら何とか生きていることも教えてくれ た(今は天職をみつけて幸いにも安定しているが)。彼女が放った言葉で一番未だに心の隅にこびりついているのは「結局、何がしたかったんだろう」という 言葉だった。その後、彼女とやりとりするたびに決まって出てくる言葉は、「死にたい」だった。  このように私が見聞きし、出会ったトランスジェンダーの人々の多くは、社会から周縁化され、その存在をほとんど否定されている人々だった。 私と社会的な死  「セクシュアルマイノリティになるって何かを失うことなのよ」と、尊敬するドラァグ・クイーンに真剣に言われたことがある。  思い起こせば、私のトランスジェンダーとしての人生も失うことの連続だった。人間として十分に社会に受け入れられないことはままあった。  女装を始めたばかりのトランス女性がリラックスできる空間は少ない。女装をして間もない頃の私には、新宿歌舞伎町のトランスジェンダーバーしか居場所 がなかった。自己肯定感は極めて低かったし、他人の目をいつも気にしていた。だから、そのバーに通い、同じトランス女性たちと話しながら、朝まで飲んで いた。今はモデルの仕事やパートナーの存在で自己肯定感を得られているが、当時の私は「社会によって人間として十分に受け入れられていない存在だ」と自 分自身で追い込んでいた。  ある日私が朝帰りをしたとき、仕送りで生活していた私に業を煮やした親から叱咤された。親に触れようとすると「あんたは何の病気があるか分からないか ら触らないで」と撥ねつけられた。  親からすれば、セクシュアルマイノリティは性病の象徴だったのかもしれない。そして、その言葉は喧嘩の中ででてきたたわいもない言葉だったのかもしれ ない。しかし、当時の私にとってその一言は「自分は人間として十分に受け入れられていない」と感じるには決定的なものだった。  私はその夜、一命は取り留めたものの、抗精神薬をお酒で大量にあおり自殺未遂をした。  もし私がシス男性と同じ感覚でいられたなら、こんな「社会的な死」には出会わなかったのかもしれない。 トランスジェンダーと性暴力  トランスジェンダーに対してネットで嫌悪感を示す人々は、トランス女性を「性犯罪者予備軍」のようにみなす傾向がある。  しかし、逆に、トランスジェンダーは性暴力の「対象」となる場合も多くある。急な身体の触れあい、合意のないキス、「君とセックスがしたい」というセ クハラ発言、こんなものは私が生きてきた中で日常茶飯事だ。それから、泥酔させられ、気づいたらラブホテル、なんていうことも数えきれないほどある。妊 娠の可能性がないため、コンドームなしでセックスされたこともある。性別適合手術まで終えたトランス女性が「結局、男の性の玩具」にされていると漏らし ていたのを今でも覚えている。  もちろん合意の上でパートナーと安定した性生活を送っているトランス女性もいる。しかし、多くのトランス女性が不条理な性暴力を受け、社会的に人間と して扱われていない現実が事実として存在するのだ。 > 次ページ 1 2 古怒田望人 阪大学大学院人間科学研究科。哲学、ジェンダー・セクシュアリティ研究をする傍ら、ジェンダー・クィア(男女どちらでもない性)当事者としてトランスジ ェンダーに関するモデル・ライター活動、イベント主催等を行う。主な論文として「トランスジェンダー理解における現象学の必要性」(『立正大学紀要』) 、「「性同一性障害特例法」における「セクシュアリティ」の問題」(『年報人間科学』)がある。また現在、藤高和輝と共にトランスジェンダー嫌悪に起因 した殺害を哲学的に分析した著作ガイル・サラモン『ラティーシャ・キングの生と死ーートランスジェンダフォビアの批判的現象学』(2018)を翻訳中で ある。 古怒田望人 後回しにされる「差別」 トランスジェンダーを加害者扱いする「想像的逆転」に抗して 性暴力被害に寄り添う「フラワーデモ」にトランスジェンダーは参加してはいけないのか 人々のトランスジェンダー嫌悪が少なくなれば、ジェンダー平等感覚の形成は進む トランスジェンダーとフェミニズム ツイッターの惨状に対して研究者ができること 「トランスジェンダーが出会う「社会的な死」」のページです。LGBT、フェミニズム、ジェンダー、トランスジェンダーなどの最新ニュースは現代を思案 するWezzy(ウェジー)で。 RECOMMEND コストコ大容量&高コスパのオススメ商品16選! メルカリでクレームに繋がりやすい出品注意のアイテムとは?  テイラー・スウィフトのメディア戦略と理不尽との戦い方『ミス・アメリカーナ』 RANKING (*) ( ) * 政治・社会 * 総合 1. 大坂なおみとエメット・ティル 2. 東京オリンピック「中止」可能性を報じないメディア 3. イギリス・ロックダウン体験レポート 4. 菅総理"ステーキ会食"擁護した橋下徹 5. 遺体を鍋で煮込んだ八王子カリスマホスト 6. 女性アスリートの性的消費、メディアにも問題 7. コロナの影響で売上減の中小企業 8. 著作権法改正、一般ユーザーが気を付けたいこと 9. 菅政権の支持率急落、短期政権へ? 10. ラウンジ嬢テキーラ事件、港区女子の危険な体験 1. てんちむへ賠償金1億を要求する録音データ? 2. 浜辺美波にジャニーズJr.ファンが警戒 3. リトグリ芹奈、心配されていたメンタル不調 4. 華原朋美いまさら小室哲哉の浮気暴露 5. ヒカルがてんちむに「100万円」のチップ 6. 「美 少年」と熱愛、鶴嶋乃愛「匂わせ」炎上 7. 長瀬智也と浜崎あゆみ「異例尽くし」だった熱愛 8. 疲弊しきった松本潤を救った、ワンオクTakaの言葉 9. かねこあや大暴走「てんちむ抱けば穴ぼこだらけ」 10. 迷惑系YouTuberよりひと格闘技イベントで逃亡 人気記事ランキングをもっと見る HOT WORD * 共働き * 主夫 * セクハラ * 日本会議 * ブラック企業 * 貧困 * 貯金 * 男性学 * 性別役割分業 * 住宅購入 * フェミニズム * 家族 * 長時間労働 * 父親 * ジェンダー * クルマ * 差別 * 教育 * LGBT * 炎上 * 生理 INFORMATION ストレスフリーなネット回線で業務効率が一気に改善! 「NUROアクセス」の魅力 ストレスフリーなネット回線で業務効率が一気に改善! 「NUROアクセス」の魅力 美談を疑う子どもたちへ/ヨシタケシンスケさん 美談を疑う子どもたちへ/ヨシタケシンスケさん 男性育休が定着した日本ユニシスの働き方改革 男性育休が定着した日本ユニシスの働き方改革 子育て、イライラしても大丈夫 子育て、イライラしても大丈夫 IFRAME: https://ds.advg.jp/adpds_deliver/p/iframe?adpds_site=messy&adpds_frame= waku_211989 PAGE TOP 月別アーカイブ 2020 12月 11月 10月 09月 08月 07月 06月 05月 04月 03月 02月 01月 2019 12月 11月 10月 09月 08月 07月 06月 05月 04月 03月 02月 01月 2018 12月 11月 10月 09月 08月 07月 06月 05月 04月 03月 02月 01月 2017 12月 11月 10月 09月 08月 07月 06月 05月 04月 03月 02月 01月 2016 12月 11月 10月 09月 08月 07月 06月 05月 04月 03月 02月 01月 2015 12月 11月 10月 09月 08月 07月 06月 05月 04月 03月 02月 01月 2014 12月 11月 10月 09月 08月 07月 06月 05月 04月 03月 02月 01月 2013 12月 10月 09月 08月 07月 06月 wezzyについて * wezzyとは * 会社概要 * 広告に関するお問い合わせ * 記事へのお問い合わせ/情報提供 * 記事配信のお問い合わせ * 著者一覧 * 個人情報保護方針について Copyright © wezzy All Right Reserved. * TOP * 政治・社会 + 自民党 + 社会福祉 + 選挙 * ビジネス + 経済 + 食 * キャリア・仕事 + 仕事 + 転職 * マネー + 投資 + 貯金 + クレジットカード * ライフ + 食 + 育児 + 介護 + 夫婦 + 住まい + 健康 * エンタメ + 芸能 + ドラマ + 映画 + 本 * 連載 + [banner200_200.jpg] 生き延びるためのマネー + [atsuko0316ss.jpg] 情報通・秘密のアツコちゃんの〈アツアツ業界裏話〉 + [kanemoto_prof.jpg] 世界一役に立たない育児書 + [nojiru.jpg] スピリチュアル百鬼夜行 + [kitamura.jpg] お砂糖とスパイスと爆発的な何か + [mitarashikana_prof.jpg] デジタルネイティブ時代のこころの処方箋 + [17270708_818481758290083_370052361_n.jpg] トランス男子のフェミな日常 + [2020americas.jpg] 2020大統領選 アメリカを取り戻す + » 連載コラム一覧» 著者一覧